複数の事業所で働く場合の雇用保険はどうなる?

退職手続き

「本業と副業、両方で雇用保険に加入できるの?」「どちらが主たる事業所になるの?」――複数の職場で働いていると、こんな疑問が頭をよぎりますよね。雇用保険のしくみは、一つの会社で働いている場合を前提に設計されていることが多く、掛け持ち勤務をしているとちょっとわかりにくく感じることもあります。でも、きちんとルールがあるので、一つひとつ確認していきましょう。

そもそも雇用保険は「一つしか入れない」のが基本

まず大前提として、雇用保険は原則として一つの事業所でしか加入できません(雇用保険法第4条)。健康保険や厚生年金とは異なり、複数の職場で同時に被保険者になることはできないのです。

「えっ、じゃあ副業先では全く保護されないの?」と不安になるかもしれませんが、少し待ってください。2022年1月から、65歳以上の方を対象に「マルチジョブホルダー制度」という新しい仕組みがスタートしました。これについては後ほど詳しく解説しますね。まずは64歳以下の方に適用される基本ルールを押さえていきましょう。

⚠️ 注意
雇用保険の「被保険者」になれるのは原則1か所のみです。複数の事業所で働いていても、雇用保険料が二重に控除されていないか、念のため給与明細を確認してみてください。もし不明な点があればハローワークへ問い合わせることをおすすめします。

「主たる事業所」はどうやって決まる?

複数の職場で働いている場合、雇用保険に加入するのは主たる事業所(いちばんメインの職場)の一つだけです。では、どの職場が「主たる事業所」になるのでしょうか?

厚生労働省の通達によると、主たる事業所の判断基準は主に「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける事業所」かどうかという点です。わかりやすくいうと、収入が一番多い職場が主たる事業所になるケースがほとんどです。

ただし、単純に金額だけで判断するのではなく、労働時間や雇用の継続性なども考慮されます。判断が難しいときはハローワークに相談することが確実です。

判断ポイント 主たる事業所 従たる事業所
賃金の多さ より多い賃金を受ける 賃金が少ない方
労働時間 週の労働時間が長い 週の労働時間が短い
雇用の継続性 長期・安定的な雇用 短期・不定期な雇用
雇用保険加入先 この事業所で加入する 加入なし

具体的な例で確認してみましょう

たとえば、平日はA社(週30時間・月給20万円)でフルタイム正社員として働き、週末だけB社(週8時間・月給3万円)でアルバイトをしているCさんの場合を考えてみましょう。この場合、賃金も労働時間も多いA社が「主たる事業所」となり、雇用保険はA社で加入することになります。B社では雇用保険には加入しません。

一方、A社(週20時間・月給12万円)とB社(週20時間・月給12万円)でほぼ同条件で働いているDさんのようなケースでは、どちらが主たる事業所か判断が難しくなります。このような場合は、ご本人がどちらかを選択し、ハローワークに届け出る形になります。迷ったら、ぜひお近くのハローワークに相談してみてください。

雇用保険に加入するための条件はそれぞれの事業所で満たす必要がある

ここがポイントなのですが、主たる事業所で雇用保険に加入するためには、その事業所だけで雇用保険の加入要件を満たしている必要があります。複数の事業所の労働時間を合算して要件を満たしても、原則として認められません(雇用保険法第6条・第38条参照)。

雇用保険の一般的な加入要件は以下のとおりです。

📋 雇用保険の加入要件(65歳未満の一般被保険者の場合)

  • 31日以上の雇用が見込まれること
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

この2つをどちらも満たす事業所で加入します。

たとえば、A社で週15時間、B社で週10時間働いている場合、合計は25時間になりますが、どちらの事業所も単独で「週20時間以上」を満たしていないため、原則として雇用保険には加入できません。ただし、後述の65歳以上向けマルチジョブホルダー制度では、合算での加入が可能になっています。

65歳以上の方は「マルチジョブホルダー制度」が使える!

2022年1月1日から始まったこの制度は、65歳以上の方にとってとても嬉しい制度です。複数の事業所を合算して雇用保険に加入できるようになりました。

🎉 65歳以上の方限定:マルチジョブホルダー制度とは?

2つの事業所の労働時間を合算して雇用保険の適用を受けられる制度です(雇用保険法第37条の5)。以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 複数の事業所に雇用されている65歳以上の労働者であること
  • 2つの事業所(それぞれ週5時間以上20時間未満)の所定労働時間の合計が週20時間以上であること
  • それぞれの事業所で31日以上の雇用見込みがあること

この制度を利用する場合は、労働者本人がハローワークに直接申し出る必要があります(事業主ではなく、本人が申請主体です)。

この制度を使えば、たとえばA社で週12時間・B社で週10時間働いている65歳以上の方でも、合算で週22時間となるため、要件を満たして雇用保険に加入できるようになります。以前は「どの事業所でも単独で要件を満たせない」と保護の網の目からこぼれてしまっていた高齢の方にとって、大きな前進といえます。

主たる事業所を退職したときの失業給付はどうなる?

雇用保険に加入している主たる事業所を退職した場合、失業給付(基本手当)を受け取るための条件はどうなるのでしょうか?

ここで気をつけたいのが、「他の事業所でも働いている場合、失業とみなされないことがある」という点です。基本手当は「失業している状態」にある人に支給されるもの(雇用保険法第15条)。従たる事業所でのアルバイトや副業が続いている場合、その就業状況によっては「失業状態にない」と判断される場合があります。

あなたはどのケース?

▶ 主たる事業所を退職し、従たる事業所(副業)も完全に辞めた場合 → 失業状態と認定されやすく、基本手当の受給要件を満たす可能性あり
▶ 主たる事業所を退職し、従たる事業所(副業)は続けている場合 → 副業での週の労働時間や収入によっては「就業中」とみなされ、受給できない・減額されるケースも
▶ 副業を続けながら受給したい場合 → 必ずハローワークで事前に状況を申告・相談することが必須。不正受給にならないよう正直に申告してください

副業を続けながら失業給付を受けようとする場合、必ずハローワークに正直に申告してください。申告せずに受給してしまうと、不正受給とみなされ、受給額の最大3倍の返還を求められることもあります(雇用保険法第10条の4)。

手続きの流れをステップで確認しよう

では実際に、複数の事業所で働いている方が主たる事業所を退職する際の手続きの流れを確認してみましょう。

1
主たる事業所から離職票を受け取る
退職後、事業主から「離職票-1」「離職票-2」の2枚を受け取ります。通常、退職から10日前後で発行されます。
2
ハローワークへ求職申込みと失業給付の申請
住所地を管轄するハローワークに離職票を持参し、求職申込みを行います。このとき、副業・従たる事業所での就業状況を正直に申告することが重要です。
3
待期期間(7日間)を経て、受給資格の確認
申請後、7日間の待期期間があります(雇用保険法第21条)。自己都合退職の場合はさらに給付制限期間(原則2か月)が設けられます。
4
認定日ごとに就業状況を申告しながら受給
4週間ごとの認定日に、副業を含む就業状況を申告します。副業収入がある日は「就業日」として申告し、収入に応じて基本手当の減額が行われることがあります。
⚠️ 副業収入がある日の申告は忘れずに!
認定日の申告で副業の就業状況を正確に申告しないと、不正受給とみなされる場合があります。「少額だから申告しなくていいだろう」は絶対にNGです。少しでも収入があれば必ず申告しましょう。

まとめ

複数の事業所で働く場合の雇用保険について、改めて要点を整理しましょう。

  • 雇用保険は原則1か所のみ加入。主たる事業所(賃金・労働時間が多い方)で加入する。
  • 主たる事業所の判断は、賃金・労働時間・雇用の継続性が基準。判断に迷う場合はハローワークに相談を。
  • 加入要件は各事業所単独で判断(原則、複数事業所の合算は不可。65歳以上のマルチジョブホルダー制度は例外)。
  • 65歳以上は「マルチジョブホルダー制度」を活用することで、2事業所の労働時間を合算して加入できる場合がある(雇用保険法第37条の5)。
  • 主たる事業所退職後の失業給付は、副業の就業状況によって影響を受けることがある。必ず正直に申告すること。

手続きは複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつ確認すれば必ず前に進めます。疑問が出てきたときは一人で抱え込まず、ぜひお近くのハローワークや専門窓口に相談してみてください。

手続きで迷ったら、一人で悩まないでください

退職・雇用保険・社会保険についてLINEで無料相談を受け付けています。専門スタッフが丁寧にお答えします。相談は完全無料・秘密厳守です。

💬 LINEで無料相談する

コメント

タイトルとURLをコピーしました